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種たち

種たち 河東晴明 「そういうわけでまさにその日、私はマルメロの実の中へ引越した。マルメロの実は種がほとんどなく、 いたって静かだったから。」 カリール・ジブラン『柘榴』 六時半に目覚めた。顔を洗いたい、と強く感じた。僕はその場で立ち上がってから、広間の床に乱...

灯るきの肖像

灯るきの肖像 コロネ三太郎 夢を見た。チョコレートのかかったビスケットを齧る夢だ。僕は生来シンプルなビスケットが好きだ が、友人はチョコレートビスケットの方が好きだと言う。春限定のストロベリーモンブランはお得感が あって好きだとも。それには同意する。いちごクリームのモンブラ...

色のない香り

色のない香り 雪代 冷たい風が頬を撫でる。北風が運んできた冬はここに腰を下ろして、最近はカイロが必須になってしまっ た。 冷えた鼻を隠すように、マフラーを引っ張って覆う。耳は氷で包まれているみたいで、冷たいというよりもは や痛い。...

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