草汰秦2016年11月7日イソヴォクスキーの憂鬱イソヴォクスキーの憂鬱 草汰秦 「不幸だなぁ、まったく」 イソヴォクスキーは掩蔽壕の中でヴォトカを呷りながら一人呟いていた。 彼は熱いためか、青と白のストライプが入ったシャツだけを着ていた。彼がまたヴォトカを呷り始めると、掩蔽壕の中 に誰かが入って来た。...
秋嗣 了2016年6月26日降誕会企画小説「ワッキー」ワッキー(原案:タイムワールド「(縄文時代に)京都でワッキーが泳いでお腹が空いてふっ飛んだ」) 秋嗣 了 ――その日ワッキーはタイ料理店にいた。 京都市で収録を済ませた後、相方と別れて狭い路地裏にひっそりとたたずむ、店に足を踏み入れたのはわずか十数分前の...
深藤 康2016年6月26日降誕会企画小説「瀬田学舎で立川が海に潜って空の彼方に消えた」原案:中執員一同「(試験当日に)瀬田学舎で立川が海に潜って空の彼方に消えた」 深藤 康 その日、構内は学生の「単位を落とすまい」という真剣な眼差しで溢れていた。今は大学試験期間の真っ只中。図書館や学食 は、これから試験に挑まんとする学生だらけで、開いている席が中々見つからな...
村川 久敏2016年6月26日降誕会企画小説「頂のその上」頂のその上(原案:最高権力者F.K.「富士の樹海で格闘家が怪しげに舞いbe God」) 村川 久敏 鬱蒼と茂る、名前も知らない植物。春先でも湿度が高いのは繁茂した植物によって地面に日が当たらず雨で濡れた土が中々 乾かないからか。唐突に飛び立つ鳥の鳴き声が響く。自殺の名所とし...
あかさたな太郎2016年6月26日降誕会企画小説「データ食」データ食(原案:薄紅千花「二次元の中で大統領と侍が食レポをして地獄を渡る」) あかさたな太郎 人類という文明の発展は、時に光の如き速さで進んでいく。人々は、その時々を革命だったりその他様々な名で呼び、人類史 のターニングポイントであると教えられ、日々生活している。もしかする...
バーニングディバイド2016年6月26日降誕会企画小説「rebirth」rebirth(原案:ヘルクレス龍「敵陣の真ん中で村人Aが必殺の右を放ち春が終わった」) バーニングディバイド 日本がまだ縄文時代だった頃……遠く離れた大陸に巨大な四つの王国が存在した。スプリクラ、サマイヤ、オハート、ウィン...
三ツ寺甘2016年6月26日降誕会企画小説「炎の先」炎の先(原案:縄文時代にイオンタウンが北海道で大爆発した「三内丸山遺跡で格闘家が火を放って自爆した」) 三ツ寺 甘 山の、むせかえるような緑の臭いを嗅ぎながら、男が一人、黙々と斜面を下っていた。日は既に傾きはじめ、朱を含んだ光の...
ぶんぶん2016年6月26日降誕会企画小説「どじょう踊りのはじまり」どじょう踊りのはじまり(原案:K氏「(縄文時代に)図書館でK村さんがどじょうおどりをして大爆笑」) 降誕会2班の班長 本日お集まりのみなさまにおいては、近日いわゆる歴史というものに、若者がたいへんな興味を示しているのは周知の通りで...
河東晴明2016年4月30日種たち種たち 河東晴明 「そういうわけでまさにその日、私はマルメロの実の中へ引越した。マルメロの実は種がほとんどなく、 いたって静かだったから。」 カリール・ジブラン『柘榴』 六時半に目覚めた。顔を洗いたい、と強く感じた。僕はその場で立ち上がってから、広間の床に乱...
コロネ三太郎2016年4月30日灯るきの肖像灯るきの肖像 コロネ三太郎 夢を見た。チョコレートのかかったビスケットを齧る夢だ。僕は生来シンプルなビスケットが好きだ が、友人はチョコレートビスケットの方が好きだと言う。春限定のストロベリーモンブランはお得感が あって好きだとも。それには同意する。いちごクリームのモンブラ...
雪代2016年4月13日色のない香り色のない香り 雪代 冷たい風が頬を撫でる。北風が運んできた冬はここに腰を下ろして、最近はカイロが必須になってしまっ た。 冷えた鼻を隠すように、マフラーを引っ張って覆う。耳は氷で包まれているみたいで、冷たいというよりもは や痛い。...
草野俊太郎2016年4月13日魔法魔法 草野俊太郎 ある日の帰り道、僕は小さな瓶を見つけた。真っ暗になった道の中で、街灯に照らされながらそれは転がっ ていた。 拾い上げてみるとラベルには「魔法が詰まった瓶」と書かれている。馬鹿馬鹿しいと思ったが、ふと考えて...
もちごめ2016年4月13日稚拙遅拙 もちごめ 「何も浮かばん」 午前二時半、僕はパソコンの前で唸り声をあげていた。文芸部である僕は明日、というより今日までに一つ の文芸作品を書き上げ、提出しなければならないのだ。締め切りを守らないと普段温厚な西岡さんに愛用の...